【対談】秦 基博×長澤知之

デビュー10周年を迎える秦 基博と長澤知之。2人はもちろん今年のオーガスタキャンプの中心人物となるわけですが、お互い同期とはいえ性格も音楽も全然違う者同士、それでも彼らは絶妙な距離感で繋がってるわけで……そんな2人を事務所に呼び出してのスペシャルトーク(っていうほど特別感ないですが・笑)で、改めて彼らの関係性を掘り下げてみました。

文:樋口靖幸(音楽と人)


普段ひとりでやってることの反動みたいな気持ち。バンドってどんな感じなんだろう?っていう

ーー2人が会うのは久しぶりですか?

「ちゃんと会うのは久々かな。ここでチラチラ会うことはあるけど。やあ元気?みたいな感じで」

長澤「そうそう。2ヵ月くらい前かな、まさにこの部屋で会ったよね。ドアの隙間からこっちを見てる人がいるから『すいません、誰ですか?』って開けたら秦くんで(笑)。『元気?』『元気。元気?』『うん、元気』みたいな」

「いつも元気の確認をしてます(笑)。でもいつもそれぐらい」

ーーじゃあちゃんと話す機会はあんまりない?

「けっこう久々かな」

長澤「そうだね。普段は会ってもそんなに。やっぱりちゃんと話すのはオーキャンの時で」

「オーキャンの時はけっこう話すよね」

ーーそうですか。ちなみにお互いの活動状況は把握してるんですか?

長澤「うん、ある程度」

「あ、今バンドやってるんだな、とか」(※AL:2015年に正式に活動スタート)

長澤「そういえば〈スミレ〉でおじいちゃんになってたね?」

「詳しいな(笑)」

長澤「どんな気持ちでこれの撮影したんだろう?って」

「俺、ちゃんとおじいちゃんになれてた?」

長澤「うん。もともとおじいちゃんっぽいところがあるから」

「ははははは!」

長澤「達観してるようなオーラを感じるし」

ーーあと、世慣れた感じとか(笑)。

「それはイヤだな(笑)。いつまでもウブな男でいたい」

長澤「そんなこと言うから世慣れてるように見えるんだよ(笑)」

ーー長澤くんがALを始めたと聞いて、秦くんはどう思いました?

「いいなぁって思いました」

長澤「バンドやりたいって思ったことあるの?」

「あるよ。でもそれは現実的な話じゃなくて、普段ひとりでやってることの反動みたいな気持ち。バンドってどんな感じなんだろう?っていう」

長澤「今まで組んだことないの?」

「軽音楽部でコピーバンドはあるけど、ちゃんとしたバンドは全然ない。だから自分がバンドで音楽を作って出てくるものが全然イメージできないんだけど、長澤くんがバンドやるって聞いて、どうやってやるんだろう?って。長澤知之っていうシンガーソングライターとバンドの中の自分って違うのか、同じなのか」

長澤「もちろん違いはあるよ。でももともとメンバーは友達だから気は楽だよ。これがバンドやるために会った人だったら無理だったかもしれないけど」

ーーメンバーの小山田壮平(Vo&G)くんがそうですね。

「例えば子供の頃から知ってる友達とバンドを組んで、それが未だに続いてるようなバンドってあるじゃん? それって幸運だよね、友達と同じ音楽を共有できるっていうのは」

長澤「そうだね。今僕がやってるバンドはそういう感じだと思うよ」

「それっていいよね。僕も周りに音楽やってる仲の良い友達はいたけど、一緒にバンドはできなかった。MR.BIGの速弾きが好きなヤツとか、メロコアばっかり聴いてるドラマーとか、仲が良くても『一緒にやるか!』っていうノリにはならなかった」

長澤「よく言う音楽性の違い(笑)」

「そうそう(笑)。だからそれが同じ友達とバンドをやれるっていうのは幸運だと思うし、羨ましい」


その時から今でもずっとそうなんだけど、なんか気が楽なんですよ

ーーそんなお2人の初対面がオーガスタキャンプだったと聞いてますが。

「たぶん。たしか長澤くんがギター持って近づいてきて『一緒に何か唄おうよ』って。で、僕が『うん』って(笑)」

ーー長澤くんから声をかけたと。

長澤「僕は前の年にヤマさんの10周年のオーキャンに出たんですけど、もちろん先輩ばっかりだったんで、その時は誰とも話ができなかったんですね。でも次の年は秦くんが入ってきたんで〈これは嬉しいぞ〉と」

「僕はもう3月にオーガスタに入ったばかりでのオーキャンだったんで、ほんとにどうしよう……?みたいな感じで。所在もないしコミュニケーションする相手もいないっていう中で、長澤くんが『一緒にやろうよ』って言ってくれて。で、『これ知ってる? あれ知ってる?』って言ってくれたんだけど僕がその曲を知らなくて(笑)。それで玉置浩二さんの〈メロディ〉を一緒にやったのを覚えてます」

ーーちなみにその年のオーガスタキャンプのステージはどうでしたか。

「どうもこうもないですよ。だって事務所入ってまだ4ヵ月とかなのに、いきなり1万人の前で唄わなきゃいけないっていうプレッシャーがすごくて」

長澤「あとバックヤードも居づらくてね」

「そうそう。それで僕、けっこう客席の後ろのほうにずっといて。バックヤードにいるよりこっちでライヴ観てたほうがいいなって」

長澤「バックヤードは先輩方ばかりだし、あんまり人の邪魔をしないようにしなきゃと思って。新人だからって気遣われるのも申し訳ないし。でも秦くんとはその時から今でもずっとそうなんだけど、なんか気が楽なんですよ」

ーー気が楽というのは?

長澤「話しかけるのが。無理に話題を考えなきゃいけないとかもないし、なんかずっとそう。気を遣わないで話ができる」

「僕もそうですね。だからってお互い距離を近づけようとするわけでもなく、遠ざかることもなく。わざわざ呑みに行こう!みたいなことにもならないんだけど、どんな音楽を今やってるのかは必ず知ってる、みたいな。新譜が出ればそれを必ず聴いて、打ち震えたり、オーキャンでライヴを観て悔しいって思ったり」

長澤「僕も同じ。あそこからずっと同じ距離感で。秦くんと一緒だと、なんか安心するんですよ。で、それはたぶん秦くんが僕に対して構えることなくいてくれるからだと思っていて。だからホッとするし、音楽も尊敬できるし。たぶん、すごく人間的なんだと思う。そういう人の音楽だなって」

ーー確かにこの人と会うとホッとしますね。むしろもう少し緊張感をもって接しないと失礼に当たるんじゃないかっていうぐらい(笑)。

長澤「それはありますね」

「近所のお兄さん的な?(笑)。でも緊張されるよりもいいですね。急によそよそしくされたら傷ついちゃうし」

長澤「傷ついちゃう(笑)。でもそこが変わらないところだなって思う。それでいてステージに上がると『ステージの秦 基博』にちゃんとなってて、バックヤードでホッとする感じとは別の秦くんがいる。それが素敵だなって」

ーーそういうギャップもあると。秦くんから見た長澤くんはどうですか?

「……これは僕の勝手なイメージだけど、長澤くんって音楽の中で常にいろんなものに鋭い刃を突きつけてる感じがして。でも実際に会って話す長澤くんは、ホンワカしてたり優しかったり、気遣ってくれたり。つまり普段の長澤くんと歌の中の長澤くんが、僕の中では乖離して感じることもあって、すごく安心して話してる半面、本当は俺のことをどう思ってるんだろう?ってちょっと不安になることがある」

長澤「あはは」

「すごくいつも知りたいんですよ。ああいう曲だったり世界をどうやって作り上げてるんだろう?って。『あれ、どうやって作ってるの?』『どうやって歌詞書いてるの?』って、そこをすごく聞きたいなっていつも思うけど、怖くて聞けない、みたいな。そういう長澤知之という才能に対しての畏怖があるというか」

ーーかたや気楽でいられる存在で、かたや畏怖を常に感じる存在だと(笑)。

長澤「気楽だったのは僕だけだったのか(笑)」

「違う違う! 俺も気楽なのは気楽なんだけど……なんかこう、自分に突きつけられてるような気がするんですよ。長澤くんの歌の中にある〈お前は××だよ〉みたいなメッセージとかが」

長澤「そっか。ちなみに〈お前は××だよ〉っていう表現はまだ使ったことがないよ(笑)」

ーーあはははは!

「でもなんかそう言われてるみたいに思っちゃうことがあって。グサグサ刺さる。だからそういう作品を作る人と話しているっていう気持ちがどっか抜けないのかもしれない」

ーーそれはわかります。

「でもそれはあくまでも音楽のことを話してる時のことで。普段は僕も全然構えないでいられる。たぶん僕と長澤くんが近しいのは、人との距離感なんですよ。ヘンにグイグイ来るわけでもないし、遠くで構えたりすることもなく、自然な距離感でいられる。そこがすごく心地いい。」

長澤「僕も同じです。とにかく楽です。自然体だから。それが心地いい」


特に長澤くんには大活躍してもらおうと思ってますから。あの、プロデューサーの意見は絶対なんで

ーーちなみに事務所の後輩とのお付き合いはどうですか?

「僕、去年のオーガスタキャンプの打ち上げで、後輩たちのいる席に座ったんですよ。そろそろ先輩としての威厳を示さないと、と思って。そしたら目の前に江川ゲンタさんと大橋卓弥さんがいて(笑)」

ーーははははは!

「後輩キャラのまま終わりました(笑)。ていうか僕、学生の頃から後輩の可愛がり方みたいなのがわかんないんですよ」

長澤「僕もまだちゃんと後輩の人たちと話したことはないですね。それこそ『どんな音楽が好き?』とか、そういう話はするけど」

「全然俺より話してる(笑)」

長澤「ヨウヘイくんに聞いたら『ビートルズが好きです、〈Black Bird〉が好きです』って言うから、『あ、そうなんだ。じゃあ唄おう』って〈Black Bird〉を唄ったり」

「俺より先輩してるじゃん!」

長澤「だからといってよく呑みに行くとかではないし。しかもそれってオーガスタキャンプの時だけだし。やっぱり人それぞれ世界があるから、そこにはなるべく立ちいらない程度にお話しすることで、『こちらに敵意はございませんよ』みたいな」

「でも嬉しいと思うよ。自分らの10年前とか思いだすと、そうやって先輩から声かけてもらえるのって」

長澤「だといいですね」

「それ、ずっと覚えてると思うよ。例えば松室くんは今26歳とかで、僕が今35で。その年齢ってちょうど僕がオーガスタに入った頃の僕とヤマさんみたいな感じなんですね。それを思うとちょっとゾッとするというか」

ーーつまり、松室くんにとっての秦くんは、キミにとってのヤマさんみたいな存在で(笑)。

「そう思うとゾッとするんですよ。やけに後輩が恐縮してたり。あれ? 俺なんかマズイこと言ったかな?って」

長澤「たぶん怖さはあると思うよ」

「自分がそれこそヤマさんに恐縮してたのと同じような感じなのか、と」

ーーで、今年10周年のオーガスタキャンプは秦くんがプロデュースすることになって。

「はい」

ーー今ここで言える範囲のことを教えてください。

「そうですね……僕はもちろんですけど、特に長澤くんには大活躍してもらおうと思ってますから。あの、プロデューサーの意見は絶対なんで」

長澤「そういう権力を笠に……(笑)」

「ははは。まあでも10周年っていうのは、僕と長澤くんだから。すごく当たり前のことですけど、来てくれるお客さんにとっていいなって思ってもらえるオーガスタキャンプにしたいと思ってるのと、せっかくプロデュースっていう立ち位置を頂いたので、自分の特色みたいなものがセッションとか選曲とかで出せたらいいなと思ってます。その中でも長澤くんにはすごく活躍してもらわないと困るんで」

ーーそこだけはプロデューサー的な上から目線で。

長澤「僕もお客さんに良い思い出を築いてもらえるようなものにしたいです。あとはやっぱり出演者も楽しかったね、と思えるもの。そのためにできることならなんでもやりたいし。あ、でも踊ったりするのはムリだから(笑)」

「そうか、踊るのはムリなのか……」

一同「はははははは!」

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