Canvas

オフィスオーガスタが新たに立ち上げた
新人発掘・開発プロジェクト。
イベント出演や制作サポートなどを通して
新人アーティストに多様なチャンスを提供していきます。

CANVAS

TOPIC

-Canvas presents Newcomer Live-『CANVAS Vol.9』ライブレポート公開!


-Canvas presents Newcomer Live-『CANVAS Vol.9』のライブレポートを公開しました!


EVENT

フライヤー


-Canvas presents Newcomer Live-
『CANVAS vol.9』

日程
2023年11月22日(水)
会場
東京・新代田FEVER
OPEN / START
18:30 / 19:00 (配信も同時刻より開始)
会場チケット
販売URL:https://eplus.jp/sf/detail/3980560001-P0030001
配信チケット
販売URL:https://eplus.jp/sf/detail/3980600001-P0030001
販売期間
2023/10/20(金)12:00 ~ 2023/11/28(火)20:00
アーカイブ配信視聴期間
2023/11/28(火)23:59 まで
出演者
AIRCRAFT / うえきさくら/ 兎角 舞う
フライヤー

音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」 のニューカマー・ピックアップ・イベント「CANVAS」もvol.9となった。今回もホームグラウンドの新代田FEVER、そして配信で、新しい才能と可能性に満ちた3組のアーティストのライブが繰り広げられた。

ちたへんりー 写真

ちたへんりー 写真

兎角 舞う。文章のような、記号のような、不思議なアーティスト名の女性シンガーソングライター。SNSを中心に活動を続け、今回が実質初のライブとなった。スツールに座りアコースティックギターを爪弾きながらハミングする姿は、まるで彼女のプライベート空間にいるような特別な空気をまといはじめる。1曲目「渇き」冒頭の〈春の夜明け〉、続く「スモークピンクに見える」最後の一節〈もう君には会わない〉という平易な日本語で綴られた言葉が、彼女の細い糸のような声で編まれると特別な色を放つ。4曲目「少女だった」をパフォーマンスする姿に彼女と音楽の関係を垣間見たような気がした。たぶんこの人は、自らの存在を音楽に依存しきってはいない。逆に音楽が彼女を傷つけるようなこともあるかもしれない。そうしたヒリヒリした音楽との共存をなんとか試みている――そうして生み出されるのが彼女のリアリティーなのだろう。
「しゃべるタイミングがわからなくて、ここまで突っ走ってしまって」と言ったときには、もう最後の曲を残すのみとなっていた。「あの……兎角 舞うと言います」
「刺/棘」を最後に披露した。自己紹介も忘れそうになるほど没頭した全6曲。たしかに彼女は歌っていた。それは過去形でも現在形でもなく、いつまでも残り続ける余韻として刻まれた。

志摩陽立 写真

志摩陽立 写真

たゆたう波のような歌声だ。うえきさくらが1曲目「揺れるほど」を歌い出した瞬間、そう思った。メロディーを声がなぞるのではなく、声自体にメロディーが含まれている。例えば、曽我部恵一や七尾旅人のように。オリジナリティーという点でこれほど強いものはない。ナチュラルにかかるヴィブラートも心地よい。曲の構成は一筋縄ではいかないものではあるが、それもおそらくは自身の声に導かれたものではないだろうか。どこに連れて行かれるかわからないような緊張感が曲全体に漂い、それが程よいスパイスとなっている。
「初めて新代田FEVERに出させていただくんですけど、1年前ここにライブを見に来て、終わったあと悔しすぎて爆泣きしながら駅に続く横断歩道を渡って電車に乗りました。その時はここで歌えると思っていなかったので、こんなに早くその機会がやってくるなんて不思議というか、うれしいです」
3曲目「しおりをはさんで」、4曲目「秘密」とライブは続く。つくづく、聴いたことのないメロディーだと思う。もちろんこれはオリジナル曲なのだからそう思うのも当たり前だ。しかし、ほとんど似たようなものが思いつかない。あるいは、そう思わせるだけの説得力のようなものが彼女の声とメロディーにはあるのかもしれない。
「私は、自分のことで精一杯な、すごい不器用な毎日を送っているんですけど、それでも目の前の人にちゃんと愛を届けられたらなっていうのが自分の原動力になっています」
ラストは、今年1月に配信リリースしたシングル「浪漫」。弾き語りのライブは久しぶりだったということで、バンドのアンサンブルが加わったらどうなるのかと楽しみに思いつつ、今日は弾き語りで聴けたことに大きな満足を得た。

Vela 写真

Vela 写真

Vela 写真

はっぴいえんどの「花いちもんめ」がフロアに流れるとAIRCRAFTの4人がステージに姿を現した。フロントの並びはギターの尾形颯馬をセンターに、下手側にボーカル&ベースの田中優衣、上手にボーカル&ギターの石川翔理、そしてドラムの松川文哉が後方から全体を見渡す。
「大阪からやってきましたAIRCRAFTです。よろしくお願いします」と石川が挨拶してライブがスタート。1曲目は「demo 3」と題された未音源化の楽曲。シャッフルビートの上で男女ツインボーカルが弾ける。2021年の結成というから、まだ実質2年くらい。にもかかわらず、演奏力もさることながら、ライブハウスで鍛え抜かれているのがありありとわかるステージングからも彼らの実力の高さがうかがえた。音楽性は、いい意味で雑多。ガレージっぽいパンクもあれば、ギターポップもあるしオルタナティブもある。これから何にでも、どんなふうにもなっていける――そんな確信的なしなやかさのようなものを感じた。そしてそれは、彼らの音楽からほとばしる青春感と合わさって、聴く者の心を揺さぶる。
「a bolt out of the blue」「逆光」と今年リリースした曲をパフォーマンスしたあとは「IKIISOGI」へ。とにかくメロディーが良い。いつ、どの時代、どの地域で演奏したとしても、誰もが同じようにポジティブな気持ちになるに違いない。奇を衒わず、堂々と真正面から突破していくその姿勢に彼らの可能性を感じた。
「名刺代わりになる曲をたくさん持ってきてよかったですね」
ラストは「何も考えたくない」。まさにバンドを代表する曲だ。繊細で図太くて、わかりやすくて複雑で、速くて遅くて、誰かに簡単に理解されるよりも理解されないまま誰かの心に引っ掻き傷を残す方がいい。AIRCRAFT、いいバンドだなと思った。

CANVAS vol.8 写真

ライブが終わり、新代田FEVERから新代田駅へ続く環七のでかい横断歩道をひとり渡りながら、1年前にここで「爆泣きした」うえきさくらの姿を想像した。そんなふうにここを渡ったのは彼女だけではないだろう。それでも音楽を鳴らした先に何が待っているだろうか。それは鳴らし続けた者たちにしかわからない。願わくば、今日見た3組がずっと音楽を鳴らすことができますように。そしてそれを自由に聴ける世の中でありますように。

Text●谷岡正浩
Photo●永田拓也


【配信アーカイブチケット】
販売URL:
https://eplus.jp/sf/detail/3980600001-P0030001
価格:¥1000
プラットフォーム:Streaming+
アーカイブ視聴期間:2023/11/28(火)23:59 まで

出演アーティストプロフィール

  • AIRCRAFT

    AIRCRAFT

    大阪を中心に活動している、2021年結成4人組オルタナティブガレージポップバンド。体が弾む、心奪われるグッドメロディ。男女混声ツインVoとルーツから溢れているオルタナティブ 要素が最大の魅力。一度ライブを体験したらリピートするリスナーがまさに「今」増加中。2022年 夏には、J:COM主催のオーディション「MUSIC GOLD RUSH2022」にてグランプリ獲得。アフ ターアワーズ、pavilion、フリージアン、えんぷていなどを呼び、隔月の自主イベントを1年通して 完走。2023年に入りそのまま加速するように、ライブで欠かせない人気曲を配信シングルとして3 曲連続リリース。そして8月には自主企画に合わせて3rd singleをリリースしている。

    Link:https://linktr.ee/aircraft_band

  • うえきさくら

    うえきさくら

    2000年生まれ。弾き語りを基本とし、バンド形態でもライブ活動をおこなう。東京を拠点に大阪などの関西や中部地方でも積極的に活動を広げる。 2023年1月には digital single “ 浪漫 “をリリース。
    言葉の温度を感じられるような真っ直ぐでノスタルジックな歌詞や、型にとらわれない変則的な楽曲を持つ。さらにのびやかで繊細な歌声に惹きつけられる。

    YouTube:https://www.youtube.com/@uekisakura
    X:https://twitter.com/uekisakura

  • 兎角 舞う

    兎角 舞う

    ネット中心に作品を発表し続け、楽曲以外公表していない兎角舞う。今回ほぼ初めてとなるライブ出演が決定!

    YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC6KTlnq8MdOqx3g7cpGheIg
    Instagram:https://www.instagram.com/mau_tokaku09/


フライヤー


-Canvas presents Newcomer Live-
『CANVAS vol.8』

日程
2023年7月11日(火)
会場
東京・新代田FEVER
OPEN / START
18:30 / 開演 19:00
会場チケット
販売URL:https://eplus.jp/sf/detail/3889090001-P0030001
配信チケット
販売URL:https://eplus.jp/sf/detail/3889100001-P0030001
販売期間
6/9(金)12:00~7/17(月)20:00
アーカイブ配信視聴期間
7/17(月)23:59まで
配信プラットフォーム
Streaming+
出演者
宇里 / Vela / 志摩陽立 / ちたへんりー
フライヤー

音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」 のニューカマー・ピックアップ・イベント「CANVAS vol. 8」。今回も才能と可能性に満ち溢れたラインナップとなった。

ちたへんりー 写真

ちたへんりー 写真

最初に登場したのは、シンガーソングライター、ちたへんりー。アコースティックギターの弾き語りによるパフォーマンスを披露した。ギターを爪弾きながら、いきなりボーカルのロングトーンで魅せる。声の存在感がハンパない。ただ、彼の魅力はそれだけではない。1曲目「さいだー」は疾走するポップスで伸びやかで透明な声の特質を十分に発揮しながら、ギター演奏にも唸らされる。1番のAメロと2番のAメロでアプローチを変えたり、ストローク、アルペジオ、ミュートや休符などを巧みに出し入れしたりすることで曲のイメージを豊かに紡ぎ出している。ギターの弾き語りとは思えないほどカラフルだ。
2曲目「僕らは未だに身体測定で背伸びをする。」では彼の器用さとセンスをさらに目の当たりにする。間奏ではビートボックスによるトランペットを披露し、その後にはとある超有名曲をサンプリングして歌うという、ヒップホップ的手法を大胆に、かつ自然にポップスに組み込んでみせた。
「生きてさえいれば自分のことが嫌いでもちょっとだけ好きな自分を見つけられたりとか、私にとってここが私の居場所やと、そういう場所が見つけられるはずやと、そう祈って、信じて最後にこの曲をやります」と言ってパフォーマンスしたのが「それでも」。〈呼吸をするたび自分が増えていく〉という歌詞の言葉がオーディエンスに突き刺さる。歌の表現力にギターの演奏力、そして歌詞のオリジナリティと、すでにアーティストとして必要なものを全て備えていると言っても過言ではない、ちたへんリーの今後が非常に楽しみになった。

志摩陽立 写真

志摩陽立 写真

志摩陽立は札幌出身のシンガーソングライターで、あらゆる楽器を演奏するマルチプレイヤーにして、自身の楽曲のアレンジ、ミックス、マスタリングまでを一人で行う。今回は、ドラムス、ベース、パーカッション 、キーボードのサポートでバンド編成のライブを行った。
いわゆるシティポップと呼ばれるものに近い音楽性だが、シティポップ自体の定義が曖昧なように、彼の音楽もあらゆるジャンルを飲み込みながら“彼のポップス”としか言いようのない音楽になっている。1曲目「ネイルバイター」は一見とっつきやすいポップスだが、要所要所で不穏な表情を見せる。展開的にもすんなり終わると思いきやアウトロで一転、この先どうなるの?といった余韻を残す。
「今日はこれを聴けば志摩陽立のことはだいたいわかるという曲をセレクトしてきました」
2曲目に披露したのは「ベンハムのコマ」。みずみずしさの溢れるポップスでサビからのグルーヴに思わず身体が揺れる。ちょっとひねくれた歌詞も独特のスパイスとなって楽曲の持つ生命力を輝かせる。歌詞の最後の一節〈らららFallin’in僕のグレーな世界 会話を車がまた遮る そして二人…〉という部分の〈二人〉の描き出し方が素晴らしい。あえて〈車〉というノイズを持って来ることで、そこには君と僕しかいないという情景がありありと見えるようだ。
ラストは、「ステップ」。4月から12ヵ月連続リリースをしている志摩陽立。そのプロジェクトのスタートとなった曲だ。いくつものメロディーが重層的に積み上がっている曲で、決して単純な構成ではない。しかしそれをごく自然な形でスッと聴き手の心に入り込むように仕上げている手腕はさすがの一言に尽きる。若きポップマエストロに注目だ。

Vela 写真

Vela 写真

3番目に登場したのは、大阪出身のシンガーソングライター、Vela。ヒップホップやR&Bをルーツに持つ彼女のこの日のステージは、DJとともにパフォーマンス。1曲目「POSE」でのクールなトラックに乗せて放たれる彼女のリリックは、それだけで音楽と思えるくらいフロウ感に満ちている。まるで言葉に羽が生えたように舞い上がり、時に深く潜る、言葉と音のマッチングに独特のセンスがあるのだろう。
また、声に強さと弱さ――クリアに伸びやかな部分と壁にもたれるようにかすれる部分――の両極端が同居しているのも大きな特徴だ。そこが深みとなっていつまでも聴いていたいと思わせる。
「基本的に私が歌う曲は、Love myselfというか、そう言ったら聞こえはいいけど、自分らしくいたいなって思う時に支えになるのって音楽だと思うんですよね。私自身がそうだったから。曲を書いてきて今ここに立っているって感じです」
6曲目に披露した「Story」は彼女の表現者としての根っこが現れた曲だ。オーガニックなトラックに乗せて歌われるのは、私は私で、あなたはあなたで、他に代えはいないんだ、というメッセージだ。先ほどのMCでの言葉もそうだったが、彼女の表現は自分というものに向き合い、自分をいかに受け止めていくか、という切実なまでの想いに貫かれている。
ラストナンバーは「Tokyo」。自分の弱さをさらけ出しながら、揺れ動く自分自身を試しながら、それでも自分を信じていくんだという決意表明とでもいうべき楽曲だ。彼女と多くの人たちがつながった先にある光景はどんなものだろう――Velaが描き出す、その先が少しだけ見えたような気がした。

宇里 写真

宇里 写真

今回の最後を飾ったのは、3ピースバンドの宇里。これまでリリースした楽曲がApple MusicやSpotifyの公式プレイリストに選出されるなど、すでに高い評価を得ているバンドだ。今回はキーボードをサポートに加えた体制でパフォーマンスしてくれた。
その透き通ったサウンドと言葉の織りなす世界は、1曲目「Birthday」の一音でフロアの空気を変えてしまった。つかみどころのないメロディではあるのだが、バンドのグルーヴがしっかりと手綱を握り、ギリギリのところで空中分解するのを免れているような際どさがたまらなく魅力的だ。強烈な光を放っている。例えばBig ThiefやBlack Country, New Roadといった米英のインディロックバンドと共鳴するようなサウンドだ。
アーバンなインストゥルメンタルの後に披露した「awase」では独特の浮遊感と疾走感が合わさり、「直感覚解放」ではブラックミュージック的なアプローチのリズムにポップなメロディが入り混じる。どこまでが感覚で、どこまでが計算なのかはわからない。けれど、全てが絶妙なバランスの上に成り立っている。ほんの少し余計な力を加えただけで崩壊してしまうような儚さが言葉を超えて何かを伝えようとして来る。
最後に披露した「日常」は、もはや削ぎ落とすものはこれ以上ないくらいにシンプルな曲だ。MCも挨拶程度で特にはない。歌詞に特別なメッセージが込められているわけではない。だけど、音として雄弁なのだ。そこにリスナーの居場所がある、そういう音楽だ。

CANVAS vol.8 写真

いつにも増して才能豊かなラインナップとなった「CANVAS vol. 8」。サブスクやDTMが当たり前になるなど、若い才能を育む環境は一昔前に比べて充実している。ただ、今回登場した4組のアーティストは、そうしたテクノロジーの発展や環境の変化といった恩恵だけに頼るのではなく、自らの音楽を自らの方法で見つけ、探求するパッションに溢れていた。きっと未来を切り開く音楽は、そういうところから生まれて来るに違いない。

Text●谷岡正浩
Photo●永田拓也


アーカイブ配信中
https://eplus.jp/sf/detail/3889100001-P0030001
※販売期間:〜 7/17(月)20:00まで

出演者プロフィール

  • 宇里

    宇里

    北海道、愛知県、東京都出身の3人が、ネット上で出会い、東京で結成されたスリーピースバンド。
    オルタナティブとブラックミュージックが交差する楽曲が特徴。

    宇里は2021年始動し、これまでリリースしたデジタルシングル作品は
    Apple Musicトップページのベストミュージックへの選出や、
    Apple Music、Spotifyの公式プレイリストに選出されるなど、
    その楽曲のクオリティーが評価されている。

  • Vela

    Vela

    大阪出身2000年生まれのシンガーソングライターVela。現在は大阪と東京を行き来しながら活動中で、J-R&BやHipHopをルーツとしつつ、型にはまらない独特のグルーヴと耳馴染みの良い声を武器にして、"新解釈のJ-POP"を発信している。リリックは常に "等身大で自身の経験に基づいたもの" で、Vela自身の視点から書いたリアルな言葉と温度感で、リスナーの心を揺さぶっている。また、ソロ楽曲においてはArtworkまで制作しており、Velaの"らしさ"の全てが詰まっている。

  • 志摩陽立

    志摩陽立

    北海道札幌市出身のシンガーソングライター。ギター、ベース、ドラム、キーボードなど様々な楽器を演奏するマルチプレイヤーとしての一面もあり、自身の楽曲も全て一人で演奏、ミキシング、マスタリングまで完結させているものが殆ど。
    ポップスをベースとして、ジャズやソウル、AORなどの要素が絡み合ったサウンドが特徴。不定期でのライブ活動と同時並行で、2023年4月リリースの4th Single『ステップ』を皮切りに12ヶ月連続リリースを予定している。

  • ちたへんりー

    ちたへんりー

    兵庫県在住のシンガーソングライター。
    16歳から楽曲制作を始め、いわゆる顔出ししないアーティストとして、自身のYouTubeチャンネルにて、カバー動画投稿やライブ配信をスタート。
    "レア度5つ星"の歌声と、田舎を連想させる描写や遊び心の詰まったテーマの楽曲が、誰もが持つ大人になりきれない子供心を刺激してくれる。
    今年1月にリリースした「ゆにふぉーむ」は、企業のイメージムービーに起用されたり、ライブにおいては関西はもちろん、東京でも自主企画を開催や、FM802 MINAMI WHEEL 2022、見放題東京2023に出演したりと、精力的に活動の幅を広げている。


フライヤー


-Canvas presents Newcomer Live-
「CANVAS vol. 7」

日程
2023年1月23日(月)
会場
東京・新代田FEVER
OPEN / START
18:30 / 19:00(配信も同時刻より開始)
販売期間
2022/12/23(金)12:00 - 2023/01/29(日)20:00
アーカイブ配信視聴期間
2023/01/29(日)23:59
配信プラットフォーム
Streaming+
出演者
luvis/ かわいるい / No plan
フライヤー

音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」 のニューカマー・ピックアップ・イベント「CANVAS vol. 7」が1月23日(月)新代田FEVERで開催された。有観客&配信のハイブリッドでの開催もお馴染みとなった今回、出演した3組のパフォーマンスはもとより、放たれるメッセージの強さにそれぞれの個性が感じられた。

luvis 写真

luvis 写真

luvis 写真

最初にステージに登場したのは、luvis。昨年11月に京都から上京したばかりという才能を秘めたZ世代のシンガーソングライターだ。今回のステージでは若手気鋭ドラマー/クリエイターのGaku Kanoを携えて、独特の緊張感と浮遊感のあるグルーヴが会場を包んだ。
エレキギターのアルペジオに乗せて語るように歌う「Journey」からライブはスタート。ジャズ、R&Bを主成分に、時折アバンギャルドなフレーズを駆使して編み込まれるサウンドは一口にこれとは言えないオリジナルのもので、あえて言えば、今を鳴らすポップミュージックといった同時代性を強烈に感じさせるものだ。まるでその場で作っているような自然発生的なメロディにフリーキーなアンサンブルが絡み合って、曲の構成やアレンジも掴めそうでなかなか掴ませてくれない、するりと逃げるような絶妙な驚きと(いい意味での)焦ったさがたまらない。トム・ミッシュとサム・プレコップがセッションしたらこんな感じになるのかも? なんて思いながら体を揺らす。
特筆すべきは、4曲目に披露した「走馬灯で逢いましょう」の歌詞は、現実の風景とも心理描写ともつかない両者の“あわい”をたゆたうように流れていく。
〈夏の残り香に耳を澄ませば 少しの痛みと柔らかな温もりが さよならを歌っている〉
メッセージとして何かを訴えるものではないが、メロディに乗せた日本語表現として、例えばはっぴいえんどや井上陽水、そして坂本慎太郎が試みている地平に繋がりうるものだと思える。
ラストは「Dance」。不穏と激情の中で弾けて消えるような一瞬を掴み切り、ステージを終えた。

No plan 写真

No plan 写真

No plan 写真

2番手は、沖縄からやって来たボーカル+ギターの2人組、No plan。地元沖縄ではストリートライブを中心に活動しているというだけあって、その場の雰囲気の作り方に巧みさを見せる。1曲目は「たばこ」。自分の不甲斐なさのために別れることになってしまった“あなた”を想う歌だ。2人の間にあったものとして、たばこが象徴的に登場するのだが、特筆すべきは、たばこの煙がいつまでも〈こびりついている〉と歌われること。消えてなくなるものという表側の意味を匂わせつつ、けれどいつまでも離れ難くあるものとして、その裏側まできちんと描くことで聴き手を歌の奥に誘導することに成功している。
「僕たちと同じ沖縄の尊敬するアーティストHYさんの曲をカバーします」ということで、3曲目には名曲「366日」のカバーを披露。沖縄のポップス文化が連綿と受け継がれていく様子を直に見せてもらったようで興味深かった。近年ではAwichなどのヒップホップ/ラッパー勢の躍進に目を見張るものがあるが、決してジャンルで細分化されているわけではない沖縄のチャンプルー精神を、彼らの切なさをたっぷり含んだ「366日」を聴きながら思った。
最後に披露したのは「記念日」。愛を誓う真っ直ぐさが力強く響いた。

かわいるい 写真

かわいるい 写真

かわいるい 写真

今回のトリを務めたのは、シンガーソングライターのかわいるい。キーボードとパーカッションとのアンサンブルで彼の描く曲の世界をカラフルに彩っていった。1曲目は「HITOMEBORE」。一癖も二癖も持っていそうなポップスでありながら、歌詞やメロディラインには可能性を感じさせるポピュラリティがあり、その茶目っけと清潔感のバランスが彼のキャラクターとも相まって音楽に説得力を与えている。次に披露した「サービスエリア」は、どこか懐かしさを感じさせるメロディが心地よいグルーヴを生んでいく。サービスエリアという言葉から喚起されるイメージを物語中の記憶として描くことで歌の世界を奥行きの広いものにしている。
「僕は音楽をやる上で人の心を動かしたいとか、優しいものを届けたいと思っていて。寂しい人にどんな言葉をかけたらいいんだろうって考えた時に、“大丈夫幸せになれるよ”っていうような前向きな言葉じゃなくて、孤独も全然あり得ることだし、孤独な人はいつだっているよって伝えることが一番寄り添った考えなんじゃないかなと思いました。未来に自分が種をまくような気持ちで作りました。」と言って披露したのは「タネを蒔く。」。性差や境遇などすべてを超えたところで鳴らされる普遍的なポップスは、そのまま彼の志向する表現の根本へと向かう。前向きというのとは違う、悩んだままを肯定する決意に溢れた音楽だ。
ラストは、「自分にとって大事な曲です」と言う「愛の囚人たち」。鋭く生々しい言葉で描かれる歌詞もさることながら、ボーカルの良さが際立つ曲だ。いくつもの可能性という煌きとともにステージを後にした。

CANVAS vol.7 写真

今回も、三者三様の個性が揃った「CANVAS vol.7」。どのアーティストからも今の時代を生きる軽やかな覚悟のようなものを感じられた。ここから新しい才能がどのように花を開かせるか、その日は意外と近いかもしれない。

Text●谷岡正浩
Photo●永田拓也


アーカイブ配信中
https://eplus.jp/sf/detail/3781670001-P0030001
※販売期間:〜 1/29(日) 20:00

出演者プロフィール

  • luvis

    luvis

    京都宇治出身、東京在住のSSW/Track Maker/guitarist
    作詞・作曲・トラックメイキングを全て自身で行う。
    先代から受け継がれてきた言葉になる前の原始的感情を 今を生きる人々へ、さらにはその先の時代に生きる人へと繋いでいく。
    ジャズ、ソウル、ビートミュージック、自然が生み出したものから影響を受けた有機的なサウンドと独特な表情を持つ歌声が特徴。

    Twitter:https://twitter.com/luvismusica
    Instagram:https://www.instagram.com/lu_vis__/
    YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=_wfR56rfIU8

  • かわいるい

    かわいるい

    2001年東京生まれ。幼い頃からピアノを習い、19歳の時、ギターと歌を始める。
    シンガーソングライターとしてギターの弾き語りのソロライブを不定期で行うほか、カフェの壁画制作やライブペインティングなどを行う現役美大生アーティストでもある。

    Official Website:https://www.kawairui.com/
    Instagram:https://www.instagram.com/rui___kawai/

  • No plan

    No plan

    沖縄出身の2人組。
    「一夜唄倶楽部」のアカウントにて、カバー動画を継続的に公開。
    TikTokのフォロワー数は16万人を突破し、投稿動画の再生回数は370万再生を超えている。
    地元沖縄でストリートライブを中心に活動中。

    TikTok:https://www.tiktok.com/@tuba.ayu22



『CANVAS Extra in Augusta Camp 2022』

日程
2022年9月25日(日)
会場
Augusta Camp 2022 場外特設ステージ”Canvas Stage”(フリーエリア)
OPEN
10:00
出演
スズキケント、レイラ、tiny yawn
MC
ジョージ・ウィリアムズ
フライヤー

音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」 のニューカマー・ピックアップ・イベント『CANVAS』が、“CANVAS Extra in Augusta Camp 2022”として、いつもの新代田FEVERを飛び出して、横浜赤レンガ倉庫前広場の特設ステージで実施された。

ジョージ・ウィリアムズ 写真

さらに、Vol.3でも話題となった、シューズブランドKEENが展開するYouTube音楽番組「Festival TV on KEENSTREAM」とのジョイトが今回も実現(後日、同YouTubeチャンネルでライブの模様をOA)。出演アーティスト全員の足元をKEENのシューズでサポートして、万全の体勢で臨んだ。ということでMCにはもちろんこの人、「Festival TV on KEENSTREAM」からジョージ・ウィリアムズが参戦。若いアーティストたちとの垣根のない普段着トークがステージとオーディエンスとの距離をグッと近づけた。


レイラ 写真

レイラ 写真

レイラ 写真

最初に登場したのは、レイラ。地元横浜出身で現在は有明(Vo&Gt)とみうらたいき(Gt)の2人体制で活動している注目のバンドだ。この『CANVAS』にはVol.4に出演している。まず1曲目に披露したのが『アパートの中で』。轟音ギターのイントロから一転、静寂な音世界のなか有明の切ないボーカルが入る。オルタナ〜エモあたりを通過し、そこに日本的叙情感をふんだんに盛り込んだようなサウンドは、音が鳴り始めて間も無く、フリーエリアとなっているステージ前に人の輪が幾重にもできるほど心を掴むものだった。ポップなイントロが印象的な『ふたりのせかい』はサビが秀逸。ねばっこいリズムに有明のボーカルが絡みつき、手をとってメロディに乗せられるような感覚がある。ラストは10/19にリリースされる新曲『話をしよう』。レイラの楽曲のアドバンテージは、歌詞はもちろんサウンド、アレンジも含めて全体でストーリー性があること。そこに大きな可能性を感じる。
「これを無料で見られるなんて!」とライブ終わりのフラッシュインタビューでMCのジョージが思わず本音を漏らすほど素晴らしいステージだった。ジョージがルーツを尋ねると、有明がゆらゆら帝国、みうらがBUMP OF CHICKENと言った。そこから派生していろいろな音楽を吸収してレイラのサウンドになっているということだ。始まりに邦ロックがあるというのが日本のロックシーンの成熟を思わせた。最後に今後の目標を訊くと有明からこんな答えが返ってきた。「夢は果てしないです。武道館も目標だけど、そこで終わらせたくない」


スズキケント 写真

スズキケント 写真

スズキケント 写真

次に登場したのはスズキケント。前回のVol.5に出演し、弾き語りながらその声と歌詞世界で圧倒した逸材だ。今回もアコギ1本の弾き語りで3曲をやり切った。1曲目に披露した『もしも星が降るのなら』は、フィッシュマンズ以降のフォークとでも形容したくなるような曲で、いわゆる70年代の日本で盛り上がった“フォークミュージック”とは一線を画するものだ。原石さながらの鈍い輝きを放つ楽曲は、これから磨き上げられれば一体どんな眩い輝きになるのか非常に興味深い。何より彼の資質として優れているのは、まずは声だ。透明感の中に危うさやアンニュイ、さらには狂気までを含んだその声は、歌の世界観に奥行きを与える魔法のようなものだ。そして言葉。奇を衒っているわけではなく、ナチュラルにそういう言葉になっているのだろうなと、音との関係性からストンとこちらの胸に響く手腕は天性のものだ。この2つがある限り、彼はどこでも歌っていけるだろう。『エキストラ』『いつものように』と続く。〈宇宙人がさらっていった子猫を取り返しに行こう〉(『いつものように』)から始まるのは物語ではなく日常だ。彼の目に見えているものが愛おしい。
「いい声してるね!」とジョージも絶賛だ。今後の目標は?という質問にはこう答えた。「去年から活動を始めて、まだ世に出ている楽曲も少ないので、これからどんどん出していきたい」。ストックはあるそうで、今後どんな楽曲がリリースされるのか楽しみだ。


tiny yawn 写真

tiny yawn 写真

“小さなあくび”という意味のバンド名を持つtiny yawn。シティポップにポストロックをハイブリッドした一筋縄ではいかない音楽が特徴の4ピースバンドだ。1曲目『夜明けの星』は疾走感がありながらも美しいサウンドプロダクトの上を綱渡りするようなMegumi Takahashi(Vo&Key)のボーカルがはかなく揺れる。後奏の流麗なギターフレーズとキーボードとの交わるようで交わらないアンサンブルが楽曲の世界の解像度を上げて聴く者の前にグッと立ち上がってくる。2曲目『Somewhere』はスラップも入るなど、R&B〜ジャズなどの要素も巧みに盛り込んだ楽曲で、間奏で雰囲気をガラリと変えてしまえるアレンジなど、バンドの可能性を感じさせる。あまりライブはやらないという彼らだが、もっと観たいと素直に思わせる完成度だ。ラストは『yawn』。浮遊感漂う曲にボーカルのナチュラルなビブラートが絶妙な味付けとなって引き込まれる。後半に向けて盛り上がるアンサンブルも素晴らしい。おそらく楽曲をクリエイトしアレンジする能力に疑いの余地はない。あとはこれからライブを重ねて行くことで楽曲を自分たちの血肉とし、多くのオーディエンスの共感を得たときにどのような変化がバンドに訪れるか――その時は意外に近いかもしれない。
ジョージとのトークセッションでは、「音源のリリースが決まっていて、その後はどこでPVを撮ろうかとか、リリースパーティをどこでやろうかとかあれこれ考えています」とKoji Yasuda(Ba)が近い未来の話をしてくれた。

さて。この『CANVAS』のステージが終わって間もなく『Augusta Camp 2022』が開演する。オープニングアクトには、Vol.3に出演していたReiRayがその時を待っている。1万2000人のオーディエンスを前にどんなパフォーマンスを見せてくれるのか本当に楽しみだ。そして、『CANVAS』からの夢の道のりが“あそこ”へつながっていることが目に見えるという事実が、新人開発プロジェクトとして何より尊いものだと感じさせた。

Text●谷岡正浩
Photo●永田拓也


アーカイブ配信中
https://eplus.jp/sf/detail/3633850001-P0030001
※販売期間:〜 7/3(日) 20:00

出演者プロフィール

  • スズキケント

    スズキケント

    東京を中心に活動する、2002年生まれのシンガーソングライター。伸びやかで透き通ったハイトーンボイスの持ち主で、身近な感覚を研ぎ澄ませたような詩的な歌詞が特徴。

    Twitter:https://twitter.com/kento__music

  • レイラ

    レイラ

    横浜出身のロックバンド。有明の情感豊かなボーカルと激しいギターサウンドで多くの支持を集める。
    2019年からは新宿LOFT&BARの往来イベント「いとしの令和」を毎年企画し、2021年にはSOLDOUTとなった。Dr.に続きBa.の脱退も発表されたが残されたメンバーは前向きに現在も活動している。

    Official Website:https://laylaofficial.jimdofree.com/

  • tiny yawn

    tiny yawn

    tiny yawn シンプルな中に90s,emo、ポストロックやネオソウルのエッセンスが加わった楽曲が注目され、2019年にはRO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019入賞、さらに同年りんご音楽祭へ出場。2020年、2021年には2年連続JAPAN JAMへの出場も決定し、注目を集めている。

    Official Website:https://tiny-yawn.work/

  • George Williams(ジョージ・ウィリアムズ)

    George Williams(ジョージ・ウィリアムズ)

    イギリスの父と日本の母をもつバイリンガル司会。DJ、ナレーション、声優と30年以上ラジオ・ミュージックビデオ番組のDJ/VJ としてミュージックシーンの最先端で活躍。インタビューでは日本に留まらず海外のビッグアーティスト ポールマッカトニー・エアロスミス等も手掛ける。そのバイリンガルのトーク術は数々のバラエティ番組・スポーツ番組・料理番組 英会話番組で好評。TV番組・イベントのMCとしても活躍。
    2020年よりKEEN公式YouTubeチャンネル内の番組「Festival TV on KEENSTREAM」のメインMCを担当している。

    Instagram:https://www.instagram.com/kungfugeorge/?hl=ja

  • ReiRay

    ReiRay

    ヤジマレイ、レイキャスナーのツインボーカルユニット。
    ヤジマレイのグルーヴィで伸びやかな歌声とレイキャスナーの甘い歌声を、洋楽ポップスのサウンドにのせて、22歳の等身大でリアルなメッセージを発信している。
    2022年6月 インフルエンサーカップル”ゆたせなcp” へ「New World」楽曲提供し、2022年8月31日 自身初となる1st Single「Typhoon」配信リリース。9月23日 には2nd Single「Skate Girl」配信リリースが予定されている。

    Linktree:https://linktr.ee/ReiRay_official




フライヤー


-Canvas presents Newcomer Live-
「CANVAS vol. 5」

日程
2022年6月27日(月)
会場
新代田FEVER
OPEN / START
18:30 / 19:00 (配信も同時刻より開始)
配信チケット購入URL
https://eplus.jp/sf/detail/3633850001-P0030001
※販売期間:〜 7/3(日) 20:00  
配信プラットフォーム
Streaming+
出演者
スズキケント / YOSHITO / 一寸先闇バンド / and more
フライヤー

  音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」 のニューカマー・ピックアップ・イベント「CANVAS vol. 5」が6月27日(月)新代田FEVERで開催された。前回に引き続き、有観客&配信のハイブリッドでの開催となった今回、出演した3組のパフォーマンスと会場のオーディエンスに、ライブハウスの熱気が戻ってきたことを実感させられた。


YOSHITO 写真

YOSHITO 写真

YOSHITO 写真

 最初にステージに登場したのは、シンガーソングライター・YOSHITO。ウッドベース、ドラムス、キーボードを従えて自身はギターを担当するバンド編成でのライブを披露した。まず驚かされたのは、バンドとアレンジの完成度の高さ。1曲目の『Night Time Surfing』では、ソウル、ポップスをベースにゆったりしたメロディからギターソロパートでは一転ジャズに移行するなど、生きたグルーヴが心地良かった。次に目を見張ったのは、日本語の乗せ方だ。2曲目『なんで』では、“なんで”という語感から発展させてメロディを紡いでいくような実験的な試みが見られるなど、言葉一つひとつの発音そのものが音楽として成立していた。おそらくそこはある程度意識的にトライしていないとできないことなのではないかと思う。
 「遊園地の光景の中で人生の時間を重ねた瞬間があった」という4曲目『Roller Coaster』ではボーカリストとしての確かな実力と可能性を示した。言葉を噛みしめるように歌うヴァースから、コーラスではファルセットも駆使しながら駆け上がっていく、まさにタイトル通りの起伏のある展開がオーディエンスの体を揺らしていく。さらにリズムが加わって以降の展開は予想外。ミーターズを彷彿とさせるニューオリンズ・ファンク的なリズムに歯切れの良いリリックをアタックさせる器用さ、何より音楽的センスに舌を巻いた。様々な音楽的要素をほどよく混ぜるのではなく、組曲的な発想でコネクトさせているところがYOSHITOというアーティストの非凡さだ。ラストは『Blue Moon』。ループするリズムに合わせて言葉がフロウしていくボーカル、効果的に入るギターフレーズなど、持ち味を存分に発揮してフロアを沸かせた。


スズキケント 写真

スズキケント 写真

スズキケント 写真

 2002年生まれのシンガーソングライター・スズキケントはアコギによる弾き語りで登場。彼の最大の特徴は何と言ってもその声だ。時にすっとぼけた味わいがあるかと思えば、次の瞬間にはヒヤリとするほどの現実を背中に押し当てられるような鋭さがある。彼の声に含まれる、どこか先を見通してしまい、全ての結末がわかった上で今を生きているような醒めた感覚は、彼の書く歌詞にも色濃く反映されている。2曲目に披露した『アンモナイト』の中のこんな一節が印象的だった。
〈みんないずれ忘れなきゃいけない 愛してたあの歌も あの人も 生まれたところも〉
かつてベックが『ルーザー』の中で、〈俺は負け犬〉と気怠く歌っていたのと似たような衝撃があった。もちろん音楽的には似ても似つかないし、スズキケントの歌詞には『ルーザー』のような自暴自棄は含まれていない。ただ、その視線が透徹しているが故に、世の中(そこには自分自身も含まれる)の濁りを際立たせるかのような表現の深度には共通しているものがあるように感じた。4曲目の『もしも星が降るのなら』では、何気ない日常をスケッチしながらもある種の心理的ノイズのようなものが忍び込んでくる描写が秀逸だし、5曲目の『いつものように』で描かれるアンニュイさは若い世代ならではの感覚だろう。とは言え、そうしたものが全て諦念かと言えば、そうではない。そこには揺るぎない希望が確かに含まれている。7曲目『シンガーソング』の前にこんなMCをした。
「歌ったり演奏したりすることは誰かを照らすことだと思っていて、そういうものを毎回ライブで確かめながらやっています」
音楽をやる意味をストレートな言葉で表現したこの曲は、スズキケントというシンガーソングライターの最もピュアな部分を感じられるものだ。本格的に活動を始めてまだ1年。ここからどんな音楽を生み出してくれるのかが楽しみな逸材だ。


一寸先闇バンド 写真

一寸先闇バンド 写真

一寸先闇バンド 写真

 ラストに登場したのは、一寸先闇バンド。シンガーソングライターとしても活動する、おーたけ@じぇーむず率いる4人組バンドだ。楽曲から感じるのは、ポップス、ソウル、フォーク、ポストロックなど、とにかく様々な要素が一つの鍋の中でコトコト煮られて、何とも名付けようのないオリジナルな味(サウンド)になっている、ということ。おそらく、全ての楽曲のソングライティングを担っている、おーたけ@じぇーむずのさじ加減で出来上がっているものだと想像する。言うなれば、レシピの存在しない家庭料理のような親近感のあふれる音楽だ。1曲目『知らんがな』は、言葉のアタックとリズムのシンクロが心地いい独特のファンクネスを感じさせる曲で、3曲目『テキーラ』は跳ねるリズムが特徴的なカントリー風の酒場ソング。
  弾き語りをしながら即興で挨拶の言葉を乗せていく、“ノープランMC”に思わず山口竜生(Syn)が「怖かったー(笑)」と本音を漏らす場面も。何が飛び出すかわからないこの感じ、ようやくライブの現場が戻ってきたなと感じられる。ここからは7月に発売予定のEPに収録される新曲を2曲続けて披露した。まずは浮遊感のあるメロディに思わず一緒に口ずさみたくなってしまう『ルーズ』。そして『意外と静かな街』はシリアスなメロディラインに魅きつけられる。
 「夏めちゃくちゃ厳しいけど、生き延びようね」(おーたけ@じぇーむず)というMCで始まったのは、ラスト『高円寺、純情』。何があっても受け入れてくれる場所として描かれる“高円寺”がそのまま“ライブハウス”に重なった。

 またどこかのライブハウスで――。ライブは非日常という人もいるかもしれない。確かにそれもそうだろう。けれど、少なくともライブハウスで行われるライブは日常と地続きなのではないだろうか。今回出演した3組が残していった余韻は、しばらく消えそうにない。

Text●谷岡正浩


アーカイブ配信中
https://eplus.jp/sf/detail/3633850001-P0030001
※販売期間:〜 7/3(日) 20:00

出演者プロフィール

  • スズキケント

    スズキケント

    東京を中心に活動する、2002年生まれのシンガーソングライター。 伸びやかで透き通ったハイトーンボイスの持ち主で、身近な感覚を研ぎ澄ませたような詩的な歌詞が特徴。

    Twitter:https://twitter.com/kento__music

    「キャラバン」Music Video
    https://youtu.be/-8G78ZRNMQ8




  • YOSHITO

    YOSHITO

    作詞、作曲、アレンジを全て自分でこなし、
    デザインや映像もセルフプロデュースするシンガーソングライター
    映画のように叙情的な歌詞の世界観で表現された
    Neo-Soul Popな楽曲が特徴
    2022年都内ライブハウスを中心に活動スタート

    Twitter:https://twitter.com/Loostripper

    「Night Time Surfing」Music Video
    https://www.youtube.com/watch?v=7-iCNJwSwz8




  • 一寸先闇バンド

    一寸先闇バンド

    シンガーソングライターとして活動をしているおーたけ@じぇーむずを中心に2019年に結成。
    ジャンルに囚われない自由度の高いサウンドでありながら、ブレる事のない歌詞の世界観と、 感情的に訴えかけてくるおーたけ@じぇーむずの声によって、独自の音を奏でている。

    OfficialSite:https://issunsakiyamiband.bitfan.id/

    Twitter:https://twitter.com/isunsakiyamibnd

    「知らんがな」Music Video
    https://www.youtube.com/watch?v=ZtRrUU8aTAs







フライヤー


-Canvas presents Newcomer Live-
「CANVAS vol. 4」

フライヤー

 音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」 のニューカマー・ピックアップ・イベント「CANVAS vol. 4」が2月21日(月)新代田FEVERで開催された。vol.1以来の有観客&配信のハイブリッドでの開催となった今回出演したのは、4組の若い才能たち。


minako 写真

minako 写真

 最初にステージに登場したのは、ソロアーティスト・minako。今回は、バンドセットでライブに臨んだ。ジャズ、ソウル、ブルースがゆっくり溶け合うようなサウンドが心地いい1曲目『Koigokoro』でスタートしたライブは、あっという間にminako色とも言える色彩に染め上げられていく。カッティングのギターリフに思わず体が揺れる2曲目『Sekai』は、配信リリースされているシングル音源のアコギを中心としたアレンジとは異なる表情を見せる。また、ギターポップ風の『Girlfriend』やWeezerを想起させるパワーポップ風の『消えた魔法』など、豊富な音楽的要素を絶妙な手触りでブレンドしていく。そうした引き出しの多さも決してバラついて感じられないのはminakoの一度聴いたら忘れられない声によるところが大きい。ラスト、『Odd』は跳ねるビートの上を滑るようなメロディが吹き抜ける風となって会場を満たしていった。


Jun Lenon 写真

Jun Lenon 写真

 2組目は、バンドLennonsのVo&Gtとしても活動するJun Lenon。1曲目『水芭蕉』はヒリついた感情を繊細なボーカルで表現するオルタナティブ・フォークとも言える楽曲だ。続く『newday』は、ジャングルっぽいリズムにエフェクトのかかったギターリフが味付けとなっているスケール感の大きな曲。ギターソロパートで裏打ちのレゲエビートを取り入れたり、飽きさせない展開がソングライターとしての非凡さを感じさせる。
「みんなとこの空間を何の壁もなく心から楽しめる時間がもっといっぱい来るように心込めて歌いたいと思います」
弾き語りバラードの『君を想えば』に続いて披露したのは、『追憶』。サビの歌詞〈響け 響け 響く 僕だけの音〉という歌詞に彼のアーティストとしてのコアを見たような気がした。ラストは、今春全国ロードショーの映画『ニワトリ☆フェニックス』のインスパイアソング『Universe』。
「今、そっと目を閉じてください。あなたが生まれて来たこと、あなたが今生きてここで音楽を聴いているこの瞬間、あなたの命はとても尊くて儚いものです。あなたの命が今日も幸せになりますように、今日もありがとう」
ストーリーのように展開していくメロディと歌詞が印象に残るバラードでこの日のライブを終えた。


戸渡陽太 写真

戸渡陽太 写真

  3組目は、戸渡陽太。ドラムとの2人編成スタイルで登場すると、いきなりアコギをかきむしりながら言葉を隙間なく打ち込むように放っていく。1曲目は『マネキン』。緩急のついたリズムとメロディがクセになる楽曲はシャンソンの要素も取り込み、〝ロック〟としか言いようのない独特の骨太な音楽をフロアに叩きつける。2曲目『Nobody Cares』はちょっとシニカルな感情をその奥にある熱い気持ちごと表情豊かなボーカルで表現していく。思わず歌の世界観に引き込まれる楽曲だ。『ギシンアンキ』では打楽器とベースを混ぜたようなギターが体を揺らす。  「すごい緊張していた」と言うが、その理由は、「1年ぶりにソロでライブができるうれしさと緊張が胸の中で絵具のように入り混じってて。音楽って、みなさんに届かないと音楽ではないんですよ。だから緊張してるんだなと思って。皆さんに届けたいという強い思いがあるからなんだなって。奇しくも今日のイベントは『CANVAS』。みんなの心の中のCANVASに僕の絵具で一生懸命絵を描かせていただきます」  5曲目、弾き語りで披露した『あなたの中を旅したい』の歌い出しから圧倒される。ライブを観ていて、まれに時間が止まる瞬間というのを経験することがある。ただその音楽と自分だけがそこにあって、他のものは一切がどこかへ消えてしまうような特別な瞬間だ。戸渡陽太、その声とメロディと存在が忘れがたいものになった。


レイラ 写真

レイラ 写真

  最後に登場したのは、横浜出身の4ピースバンド・レイラ。ゆったりとしつつもタイトなビートにノイジーなギター、そして女性Vo&Gtの有明の抜けのいい歌声が只者ではないオーラをのっけから放つ『ふたりのせかい』からスタート。2曲目『feedback』ではさらに獰猛さを増したサウンドが、普通にまとまることを拒絶するかのように破綻するギリギリのアンサンブルを見せつける。Sonic Youth、ナンバーガールあたりの影響を感じさせつつ、彼らにしか表現できないキャッチーさをあわせ持っている点が何よりの武器だ。疾走感あふれる『Emma』では有明がさらに激情を爆発させ会場の沸点を上げる。新体制での初のライブとなった今回、さらに研ぎ澄まされたグルーヴを手に入れ、新章に突入したバンドの姿を示した。4曲目『Flyaway!』の轟音ギターソロの美しさに浸りながら、いいバンドだよなぁと心の底から思った。トレンドがどうしたとか、そういう誰かの決めたような枠組みではなく自分たちの表現したい音楽と目の前のオーディエンスにとっての真実と共感だけを信じて、あらゆる壁をぶち壊して欲しい、誰の言うことも聞かないでいい――ロックバンドってそういうことだろう? 全6曲、どの曲も1ミリも何にも媚びていなかった。
今回登場した4組はその個性も音楽性ももちろんバラバラだ。しかし、すべての出演者が去った何もないステージに漂う残像のようなものに、どこか似ているものを感じた。

Text●谷岡正浩
Photo●永田拓也


アーカイブ配信中
https://eplus.jp/sf/detail/3565130001-P0030001
※販売期間:1/21(金) 正午 〜 2/27(日) 20:00

出演者プロフィール

  • 戸渡陽太

    戸渡陽太

    福岡県出身。
    シンガーソングライターとして高校時代から大きな注目を集め、2016年に「東京スカパラダイスオーケストラ」のレーベル「JUSTA RECORD(avex)」より、1stフルアルバム「I wanna be 戸渡陽太」でメジャーデビュー。
    2019年3月31日をもってエイベックス・マネジメントとの専属契約を終了。
    同年4月より、ソロと並行しバンド活動をスタート。「WHITE LIE」のフロントマンとして新たなステージに挑む。
    趣味は「コーヒー、料理、カメラ」

    http://towatariyotablog.com/

  • minako

    minako

    2001年東京都生まれ。
    2021年7月よりソロ活動をスタートし、1st.single,1st.EPをデジタル配信。
    2022年からバンドセットでのライブ活動も開始。また、SuUのサポートメンバーとしても活動。好きなバンドはThe Marias。

    https://twitter.com/ph_a8

  • レイラ

    レイラ

    2016年6月結成、横浜発4ピースロックバンド。2017年当時、メンバー平均年齢18歳の若さながら、「RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL2017」に入賞、「未確認フェスティバル2017」ではセミファイナル進出など早くから注目を集める。同年8月には1st mini album『あなた色に染まりたいの』をリリース。以降、音源のリリースとともに、ワンマンのソールドアウトや各地のサーキットフェスでは入場規制がかかるなど、多くのライブ、イベントにも出演。2021年5月に発売された2nd mini album「World」は初の全国流通盤となりタワレコメンにも選出される。2019年からは新宿LOFT&BARの往来イベント「いとしの令和」を毎年企画し、2021年にはSOLDOUTとなった。Dr.に続きBa.の脱退も発表されたが残されたメンバーは前向きに現在も活動している。

    https://laylaofficial.jimdofree.com/

  • Jun Lenon

    Jun Lenon

    ジュンレノン
    フランスとドイツのFes、イギリスでの路上 Liveで培ったバイブスを奏でる
    シンガーソングライターであり、
    ロックバンド「Lennons」のVo.Gであるアーティスト。
    2019年に自身の1st ALBUMとなる「Quark」をrelease。
    2022年、今春全国ロードショーの映画「ニワトリ☆フェニックス」のインスパイアソングをreleaseすることが決定。

    https://lit.link/junlenon






フライヤー


-Canvas presents Newcomer Live-
CANVAS vol.3 feat.Festival TV on KEENSTREAM & Spinnup

日程
2021年11月20日(土)
配信スタート
18:00
配信プラットフォーム
OfiiceAugusta YouTube Official Channel
https://www.youtube.com/c/OfficeAugusta
出演者
ReiRay、Tok10 、ASOUND
MC
George Williams
フライヤー

 音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」 のニューカマー・ピックアップ・イベント「CANVAS vol. 3」が11月20日(土)18:00から無料ライブ配信で開催された。場所は、vol.1からおなじみの新代田FEVER。
 今回はアウトドアフットウェアブランドKEENが展開するYouTube音楽番組「Festival TV on KEENSTREAM」とジョイントするスペシャル・プログラムとして開催され、現在「Festival TV」内でユニバーサル・ミュージックが運営する音楽配信代行サービス「Spinnup」と共に「Canvas」が有名無名を問わず新人アーティストをレコメンドするプログラムが進行中。今回はその拡大版としての意味合いも持っている。
 MCには「Festival TV on KEENSTREAM」からジョージ・ウィリアムズが参加。今回集まった個性の違う3組のアーティストと飾らないトークを展開した。また、ステージ上はサボテンなど様々な植物で彩られ、それがアーティストによって変わっていくというのも見どころのひとつだった。

 まずは、MCのジョージが登場して、画面の前のオーディエンスに挨拶。
「Bigなアーティストも最初はBigじゃないからね。当たり前だけど。今日出てくれる3組のアーティストがもしかしたら3年後には超Bigになってるかもしれない! そんな彼らから何かを感じてくれたらうれしいです」

ASOUND 写真

ASOUND 写真

ASOUND 写真

 ジョージのコールに続いて登場した1組目は、ASOUND。ARIWA(vo)、Couta(key)、Soma(b)、Manaw Kano(Dr)の4人編成で繰り出されるのは、ルーツレゲエ直系のとにかく気持ちのいいサウンドだ。ただ、ベースにレゲエはあっても4人の個性が合わさるとジャンルレスな音楽になるというのが彼らの最大の魅力だ。1曲目「いつの日か」でのピアニカを使用したイントロや、浮かび上がる情景に色をつけていくようなARIWAのボーカルなど、随所にポップセンスが光る。それは例えば次の「Feel it」でも存分に発揮されていた。よりルーツレゲエ色の濃い曲ではあるが、演奏のツボはしっかり押さえつつ、軽やかに聴かせる実力がすでに備わっているのだ。「できたばかり」という新曲「Nature」では、しっとりとしたソウルを聴かせ、続く「Everything Good」はアフリカンビートを感じさせるリズムを織り混ぜるなど実に多彩。ラストは「moni moni」。フィッシュマンズ的アプローチのサウンドの上で〈惑わされるな 転がされるな〉というリリックがリフレインして染み渡っていく。
 終演後にはジョージとARIWA & Somaがトーク。結成の経緯やこれまでの活動などが語られていく。最後に「今後はどのようなバンドを目指していきたい?」という質問にARIWAが答えた。「8月に初のEP『Feel It』をリリースしたので、もっとオリジナルを増やしていきたいですね。ゆくゆくは世界共通で聴いてもらえる楽曲をつくりたい」

Tok10(トキオ) 写真

Tok10(トキオ) 写真

Tok10(トキオ) 写真

 次にステージに登場したのは、Tok10(トキオ)。Z世代ラッパーとして早くから注目を集めている逸材だ。彼のラップスタイルは、韻を踏んでフロウする以上に言葉がリズムに直結しているところだ。だからこそ、ステージでより映える。また、そのメッセージは決してアジテーションになることはなく、自分自身の奥深くから掴み取った感情をそのまま言葉にして伝えている無垢なものだ。だから、2曲目に披露した「Chill out」で穏やかな日常を描写することができるし、3曲目「You are the”1”, my girl」では真っ直ぐなラブソングを届けることができる。そこに彼自身の実感(フィクションかノンフィクションかという問題ではなく)が息づいているのだ。6曲目「Honey」の前にはこんなMCを披露した。
「僕の大事な人に向けてつくりました。大事な人っていうのは自分自身も含まれていて、だから自分に向けてつくった歌でもあります」
 アコギとフィンガースナップのみというシンプルなトラックの上で、悩みや不安、強がりなどをストレートに表現していくリリックが胸を打つ。全9曲、Tok10がこの日だけのアートを思い切り描いてみせた。
 ジョージとのトークでは、フリースタイルラップでMCバトルからキャリアを始めたこと、自分でMVを制作し、最終的には映画を1本撮りたいという野望を明かしていった。
「最近自分の型に縛られている気がするので、もっと自由にやっていきたいですね」と、ステージ直後に自分の殻を破る宣言をするあたり、やはりただ者ではない。

ReiRay 写真

ReiRay 写真

ReiRay 写真

  今回のトリを務めたのは、ReiRay。今年8月に惜しくも解散したFAITHのヤジマレイとレイキャスナーが結成した新ユニットだ。「実は今日が初ライブ」(レイキャスナー)という記念すべき日となった。「今日からスタートするという希望と決意を込めて歌います」(ヤジマレイ)と二人のハーモニーから始まったのは「New Life」。
 ツインボーカル&ツインギターから放たれる彼らの音楽は、自由と雄大さを感じさせ、それは音楽を始めるワクワク感や、どこまでも尽きない情熱に支えられている。ビートの乗り方も軽やかで、ウエストコーストの太陽と乾いた風が見えるようなサウンドスケープが心地いい。続く「Skate Girl」「Gummy Bear」と、サビでパッと視界が開けるようなメロディセンスに加えて、一筋縄ではないかないソングライティングの妙も感じさせ、例えばアメリカ西海岸出身のバンドCAKEなどにも通じるポップネスを持ち合わせているところも見逃せない。
 4曲目の「Free Ride」では、ゲストボーカルにAlina Saitoを迎えてパフォーマンス。彼らとAlina Saitoが出会ったのが9月に行われた「CANVAS vol.2」で、その時はAlina SaitoのゲストアーティストとしてまだReiRayという名乗る前の彼らが1曲参加していた。そこからわずか2ヶ月ほどで新曲を共作したというから驚きだ。3人のボーカルスタイルの個性がはっきり感じられ、ミドルテンポで心地いい曲だった。ラストは「Typhoon」。
「台風が過ぎた後には必ず晴れるように、辛いことや苦しいことがあっても必ずその先に明るい未来が待っていると信じてこの曲をつくりました。僕たち2人もずっとやっていたバンドを解散してしまって、そこから先の不安や悩みとかいろいろあったんですけど、またこうしてReiRayを始めてたくさんの人にサポートしてもらえて、今日こんなに楽しい日を迎えられて未来はまだまだ明るいと実感しています」(ヤジマレイ)
強引にでも目の前の扉をこじ開けるような力強いサビが印象的な曲は、世の中の雰囲気にもマッチして、これから先の素晴らしい未来を予見しているようだった。
 終演後のジョージとのトークでは、ReiRay以外の候補に上がっていたバンド名を明かすなど、終始楽しい雰囲気で終えた。
 パワーアップした「CANVAS」、次回以降も、どんな才能たちに出会えるか楽しみだ。

Text●谷岡正浩
Photo●永田拓也

出演者プロフィール

  • ReiRay(レイレイ)

    ReiRay(レイレイ)

    ヤジマレイ、レイキャスナーのツインボーカルユニット。
    ヤジマレイのグルーヴィな歌声とレイキャスナーの⽢い歌声を、洋楽ポップスのサウンドにのせて、22歳の等⾝⼤でリアルな気持ちを発信している。

    2014年 中学2年の時に出会い、バンド “FAITH” を結成。
    2020年 メジャーデビュー、2021年8⽉ メンバー脱退を機に ”FAITH” 解散。
    2021年10⽉ “ReiRay” として活動していくことを発表。

    ReiRay Linktree:https://linktr.ee/ReiRay_official

  • ASOUND(アサウンド)

    ASOUND(アサウンド)

    それはある日突然、必然の出会いで始まった。 才能に溢れる今注目の新世代バンド”ASOUND”。 Reggae、R&B、Jazzなどジャンルにとらわれない音楽性はノマド=遊牧民のように自由だ。 ”その時にやりたい曲を自分たちのやり方で表現すること” 毎回現場に合わせ音の彩りを変える変幻自在なオリジナル性溢れるスタイルでライブに来たオーディエンスを魅了している。しかも驚くことに結成はわずか1年前!である。
    NY留学を経験する若くして圧倒的歌唱力を持つ”ARIWA”、数々のバンドでステージをこなしてきた20歳キーボーディスト”Couta”、音楽の修行の為に上京してきた21歳ベーシスト”Soma”、そして18歳にして海外での演奏経験を持つ実力派ドラマー”Manaw Kano”の4人編成。

    最新音源EP「Feel it」:https://artists.landr.com/692531126788
    Instagram:https://www.instagram.com/asound_official_/?hl=ja

  • Tok10(トキオ)

    Tok10(トキオ)

    メルヘンチックに愛を奏でたかと思えば、突如としてダークサイドから世界をせせら笑う変幻自在のZ世代ラッパー。MVのためにクラウドファンディングを行い、noteにて音楽マネタイズの手法を公開するなど若手セルフプロデュースラッパーのアイコン的存在である。

    Tok10にとって、ラップは、「根源的で人間的なものを表現する総合アート」だ。彼にとってのラップは、第一にリズム楽器、ただし、ボイスパーカーッションやドラムなどとは異なり、リズムに言葉の意味を直接的に込めることができる表現形式である。
    一般にラップというと、アンダーグラウンドかつ反社会的なイメージ、あるいはセルフボースティング(自慢)やバトルによるディスり合いといったイメージが強いが、Tok10の目に映るラップの魅力は、もう少し根源的な人間の在り方に関わっている。それは、他の表現形態では伝えることが難しい、「生き物としての心臓の鼓動(リズム)+人間を人間足らしめている言語(ことば)」のコラボによる複合的な表現である。
    Tok10がトラックにのせて語るrhyme(韻)はそのままrhythm(リズム)へとつながっている。それが歌って踊れる彼の作品の心地よさ。

    最新配信Single「Chill Out」:https://spinnup.link/486354-chill-out
    Instagram:https://www.instagram.com/10_the_number_of_dreams/

MC

  • George Williams(ジョージ・ウィリアムズ)

    Alina Saito

    イギリスの父と日本の母をもつバイリンガル司会 DJ ナレーション 声優
    30年以上、ラジオ・ミュージックビデオ番組のDJ/VJ としてミュージックシーンの 最先端で活躍。
    インタビューでは日本に留まらず海外のビッグアーティスト ポールマッカトニー・ エアロスミス等も手掛ける。
    そのバイリンガルのトーク術は数々のバラエティ番組・スポーツ番組・料理番組 英会話番組で好評 TV 番組・イベントのMC として活躍。
    2020年よりKEEN公式YouTubeチャンネル内の番組「Festival TV on KEENSTREAM」のメインMCを担当している。

    Instagram:https://www.instagram.com/kungfugeorge/?hl=ja



フライヤー

 オフィスオーガスタが立ち上げた新人発掘・開発プロジェクト『Canvas』のvol.2が新代田FEVERで開催された。当初、有観客で予定されていたが、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえて急遽無観客オンラインライブ配信となった。
 今回集まったのは4組。バンドあり、シンガーソングライターあり、マルチクリエイターありと、バラエティ豊かな才能たちが遺憾なくその片鱗を見せつけた。

Nozomi Kanno 写真

Nozomi Kanno 写真

最初に登場したNozomi Kannoは若干21歳のシンガーソングライターだ。『Canvas』ではデモテープを受け付けており、今回彼女はその中から選ばれて出演することとなった、まさに原石の才能だ。
 アコギ弾き語りで披露された「悪魔が眠る夜」と題された1曲目。その声が会場に響いた瞬間、風景が変わった気がした。美しさの中にゾッとするような冷たさを含んだ声は、Nozomi Kannoが紡ぎだすメロディと絡まり合い、心象風景の奥へ奥へと引きずり込まれていく。続く2曲目「Give a bark」にしても、決して明るくハッピーな歌ではない。でもそこには、聴く者の心を震わせるという音楽としての真実が確かに含まれている。
「出演が決まってから夜も眠れないくらい緊張しました。少しでも自分の音楽を届けられたらいいなと思います」
 「1990」でのレイドバックしたチルなビート感、「好きになれたらいいのに」で見せたピアノをベースにした深みのあるバラードなど、様々な音楽を吸収して自分のものとして鳴らしているのがわかる。また観てみたい、そう思わせるには十分すぎるほど鮮烈な印象を残した。

DADA GAUGUIN 写真

DADA GAUGUIN 写真

 DADA GAUGUINは、映像チーム「’n STUDIO」の代表ninでもある。そのため、ライブで使用されるアニメーションのクオリティは圧倒的だ。曲ごとに作家やテイストが異なり、より作品世界で描かれたイメージやメッセージが伝わりやすくなっている。アニメーション作品としても秀逸な「春の日」は、同調圧力や社会的無関心といった身近にある問題がテーマとなっている。サビで歌われる〈拗ねてばかりじゃ視力は落ちるよ 地獄の果ては地獄ではないよ〉という言葉がキラキラと光のように降り注ぐ。おもちゃ箱をひっくり返したようなポップなサウンドは、ボカロ的な手触りも残すサウンドメイクで一瞬たりとも飽きさせない。2曲目「シンセリアリティ」はシンガロングがフィーチャーされている曲で、ライブ映えする1曲だ。自分らしさって何だ?というメッセージも真っ直ぐ突き刺さってくる。 「最初の頃の僕も知ってもらえたら」という「balloon」は、映像なしのパフォーマンスという初期の匂いを残す曲だ。ゆったりとしたメロディからサビで一気にテンポアップする展開はまるでジェットコースターに乗っているようで、その完成度に驚かされた。大きな会場で観てみたいと思わせるパフォーマンスだった。

Alina Saito 写真

Alina Saito 写真

 シンガーソングライターのAlina Saitoは、耳の早い音楽ファンの間ではすでに話題となっている存在だ。まだ21歳という若さながら、今年1月にリリースした1st EP『Made of You』で確かな実力を見せている。疾走感が心地よいアーバンなネオソウル「Voice in the wind」では伸びやかで芯のあるボーカルの中に、独特のリズム感が備わっているところに天性のものを感じた。
「最初に自作した曲」と言う2曲目「記憶のモノローグ」では、モノトーンな感触のメロディに一筋の光が差すようなサビへのグラデーションを見事に表現した。
「ライブって楽しいなって思うことのひとつに、一緒に演奏するミュージシャンと影響し合って、お互いのいいところを引き出し合いながら歌えるというのが素晴らしいですよね」
 3曲目に披露した「Fly」では、Aメロの譜割りも鮮やかな印象を残しつつ、抑制しながらもエモーショナルに歌い上げる歌唱が素晴らしかった。EP収録の全編英語詞「Heartbeat」で配信上はライブ終了となったのだが、実はこの後カバー曲が披露された。権利関係で配信は叶わず、後日彼女のSNSでの公開となったが、その曲はアリシア・キーズの「If I Ain’t Got You」。オフィスオーガスタよりデビューし今年8月に惜しまれながらも解散したバンドFAITHから、Gt.Voヤジマレイ・Gt.Voレイキャスナーの2人をゲストに迎え、ピアノ+エレキギター+アコギという編成で披露した後、「もう10回は歌いたい」と茶目っ気たっぷりに言ったその姿に、彼女の音楽愛がしっかりと伝わってきた。



Set Free 写真

Set Free 写真

 トリを務めたのは、Vol.1にも出演して、いい意味でイベントを引っ掻き回した京都出身5人組バンド・Set Free。1曲目はディスコ+ギターポップな「TALK! TALK!」。5人それぞれの個性をそのまま音に反映したようなカラフルなサウンドは、タイトな演奏があって初めて成立するもの。ライブ巧者という表現がしっくりくるバンドだ。その中にあって、フリーな立場で踊ったりコーラスしたりカメラを煽ったりしてステージの主役に躍り出るワイニーの存在そのものが、このバンドがライブバンドであることを証明している。
 「ヘヴィメタ」と題された2曲目は、当たり前だが(と言い切ってしまう)、ヘヴィメタルではなく、むしろ直球のポップソング。とは言え何にも関係ないかと言えばそんなことはなく、歌詞の中に散りばめられた〈地獄〉〈血〉といったワードが確実に刺さってくるというセンスはさすがとしか言いようがない。次に披露した新曲「レスラー」でも、マッチョなイメージはどこへやら、ジングルのような派手なイントロからゆったりしたAメロ、クラップや掛け声などを用いたサビといった具合に、まるでプロレスの試合のようにくるくるとイメージが変わっていく。
 ワイニーのマイブームは「朝起きること」という告白から、「ねあかなこころ」「風にさらわれて」のアップテンポな2曲でフィニッシュ。「風にさらわれて」の途中に3・3・7拍子が入ったり、とにかく何が飛び出すかわからないセンスに溢れている。この日のパフォーマンスに敬意を評して京都風に言うなら、“けったいなバンド”だ。そして、“けったい”であるということはオリジナルだということ。それをさらりと見せつけたSet Freeに拍手を送りたい。
 今回は無観客配信ライブとなった『CANVAS Vol.2』。さらなる新しい才能との出会いと有観客ライブに期待して次回開催のアナウンスを心待ちにしたい。

(Text●谷岡正浩)

出演者プロフィール

  • Set Free

    Set Free

    京都を中心に活動中の5人組バンド。
    渋谷系・00 年代に影響を受けつつも、エバーグリーンなサウンドと遊びゴコロから真理を映し出すような歌詞が特徴。
    ちょっぴり甘くて繊細で、少年のような歌声。
    アイコニックなメンバー、「ワイニー」。
    個性豊かでカラフルなメンバー達が、独自のエンターテインメント音世界へ導く。

    オフィシャルサイト:https://artist.aremond.net/setfreeband/

  • DADA GAUGUIN(ダダゴーギャン)

    DADA GAUGUIN(ダダゴーギャン)

    2014年頃より活動するninによるソロプロジェクトで、自身が代表を務める制作チーム n' STUDIOと共に、音楽だけでなく映像や写真などの作品も制作している。

    現在、3名のクリエイターと共に、3つの新曲をアニメMVとしてリリースする企画を進行中で、第1弾の「春の日」は2万回再生され、インディーズアニメフェスタにノミネートするなど、国内外の短編映画祭にて上映された。
    第3弾も年内リリース予定。

    オフィシャルサイト:http://dadagauguin.chobi.net/

  • Alina Saito

    Alina Saito

    シンガーソングライター
    2000年2月3日生まれ。東京都出身。
    日本とオーストラリアのハーフでバイリンガル。
    2018年から本格的に音楽活動を開始、ライヴや楽曲リリースなどを行なっている。
    2020年7月に先行シングル「Night Owl」、2021年1月に1st EP「Made of You」をリリース。
    暗闇に燃える蝋燭のようなヴォーカリスト。

    オフィシャルサイト:https://alinasaito.com/

  • Nozomi Kanno

    Alina Saito

    2000年生まれ。15歳の時にギターをはじめる。
    独学で作詞・作曲を学ぶなかで音楽家という職業に興味を持ち始め、DTMを使用しての本格的な楽曲制作を開始。
    2000年代生まれならではの新しいクリエイティブ感覚と時代を超える普遍的なメロディが高い評価を得る。

    オフィシャルTwitter:https://twitter.com/nozomi_kanno



フライヤー

 なかなか思うようにライブに行けない日々が続く中、着実に日常を取り戻しつつあることを実感できる取り組みがスタートした。
『Canvas』と名付けられたこのプロジェクトは、山崎まさよしやスキマスイッチ 、秦 基博などが所属する音楽プロダクション・オフィスオーガスタが立ち上げた新人の発掘・活動支援プロジェクトだ。音楽の、そしてライブの火を消さないために草の根から活動していくそのマインドが何より頼もしい。
5月14日(金)新代田FEVERで行われた、第1回目となるショーケースライブ「CANVAS vol.1」には5組のアーティストが集結した。

畠山拓郎 写真
最初に登場したのは、去年北海道から上京して東京で活動をしているという畠山拓郎。アコースティックギターの弾き語りで全4曲を歌い切った。何と言っても特徴的なのはその声だ。独特の丸みと鋭さを併せ持った声は、歌の中で描かれる微妙な心模様を表現していく。そして、飄々としていながらも、実はエモいというところも魅力的に映った。
 ギターをストロークしながら語ったMCもまた独特だった。
「いつかまた必ず会いましょうといろんなアーティストが言っているのは本当だからであります。皆さんそれぞれ好きな音楽があると思うから、一人ひとりがそのアーティストのことを信じてあげてください」
 最後に披露した『最後の夜は』では、1曲の中で大きな物語の起伏を感じさせるメロディラインや、途中に用いられる大胆な転調など、ソングライティング・センスを感じさせた。

レトロリロン写真
 次に登場したのは、レトロリロン。Vo +AG、B、Key、Drと編成は至ってオーソドックスながら、そのサウンドは変幻自在。70年代ソウル、シティポップ、ジャズ、ラテン、レゲエ、ヒップホップなどの要素をさりげなくまぶすセンスの良さは、タイトでグルーヴィーな演奏技術があるから成り立つもの。そして何より涼音(Vo&AG)の紡ぐ言葉が日常感や生活感の枠の中だけに収まらず、そこからメッセージとしてきちんと発しているところにバンドの骨太な魅力を感じた。
「前と同じにはならないかもだけど、今はこのままでいいんじゃないかな」という現状認識を歌に込めた『朝が来るまで』の、必要以上に前向きでも後ろ向きでもないちょうど良さに気持ちが軽くなったような気がした。

Furui Riho写真
 3番手は、北海道をベースに活動するアーティスト、Furui Riho。打ち込みとキーボードをバックに圧倒的な表現力の歌を響かせた。ゴスペルをルーツに持つというだけあって、歌唱力は抜群、加えてヒップホップ・ネイティブを感じさせるメロディラインも秀逸。何より、歌における細かな表現力が群を抜いていた。
3曲目に披露した『嫌い』では、自分の容姿や性格など嫌いなところをあげていき、他人と比較し、〈でもそう 君は私にはなれない 同じものはいらない〉とアイデンティティーを自覚していく。希望でも慰めでもなく、自分自身の中に深く潜った記録として綴られる歌という点がリアリティーを感じさせる。
 ラストの『Purpose』ではきっちり韻を踏みながらリズムを繰り出すヴァースと伸びやかに歌われるサビでフロアを揺らしていった。

Set Free写真
 4番手に登場したのは、京都在住のポップロックバンド・Set Free。90年代渋谷系〜ギターポップ直系かと思いきや、それだけではない〝ややこしさ〟を感じさせるのがいかにも京都のバンドといった感じ。パンクやハードコアの持つ攻撃性や毒性も秘めているのがSet Freeの一筋縄ではいかないところだ。
 それは編成にも現れている。バンドの中で最もキャッチーな存在感を放つワイニーは、これといった担当があるわけではなく、曲によってコーラスしたり、フラフラしているだけの時もあったり、いかにも自由。MCでは、メンバーそれぞれの「尊敬する人」を事前にヒアリングして発表してくれたり。最後に披露した『くるくる』では2MCの一翼を担ったり。なんとも掴みどころがない。しかし、彼のパフォーマンスがあるからこそライブを実感できる。フロアを大いに盛り上げてくれた。

いつかのネモフィラ 写真

いつかのネモフィラ 写真
 トリを務めたのは、いつかのネモフィラ。VoにGt2人の3人組。今回は、BとDrをサポートに迎え5人編成でライブに臨んだ。切ないフレーズを爪弾くギターが響き、前海の歌が入った瞬間、フロアの色や温度が変化するのがわかった。一瞬で歌の世界に持っていくヴォーカル力がとにかく圧倒的だった。そしてヴォーカルだけでなく、例えば1曲目『逆にね。』の2コーラス目からアレンジをシンプルに変化をつけるバンドアレンジにも、彼らの基礎体力の高さが伺えた。
 もともとベースを弾きながら歌っていたという前海。約1年ぶりとなった今回のライブからベースはサポートに任せ、自らはヴォーカルに集中することで、その表現力はより彩度を上げたものになった。その新体制での一発目の曲となった『マジックアワー』は青春の終わりを感じた瞬間を歌にした曲。まるで刻一刻と色を変えていく空のように表現の深みを増していくヴォーカルと演奏が印象に残った。
 ラストは自粛中に書いたという『リタ』。もどかしさを表現したミディアムバラードが会場を包み込んだ。
 まったく個性もジャンルも異なる5つの才能が、真っ白いキャンバスに色をつけてくれたシリーズイベント『CANVAS』。今後の展開も大いに楽しみだ。

(Text●谷岡正浩)
(写真●永田拓也)

出演アーティスト

  • 畠山拓郎

    畠山拓郎

    北海道大沼町出身のシンガーソングライター。
    2018年からシンガーソングライターとして活動開始。ジャンルは主にポップス「生活に溶け込むような音楽」をテーマに楽曲制作を始める。
    2020年4月より活動拠点を東京に移し、ライブステージングに磨きをかけている。
    2021年2月、自身初となる音源『ラブソングがうたえない』の配信が各ストリーミングサイトで開始。
    https://linkco.re/5R2Sfgcf

  • レトロリロン

    レトロリロン

    2020年6月1日にシンガーソングライターである“涼音”を中心に結成されたレトロリロン。
    メンバーの多種多様な音楽性によって生まれるジャンルレスなサウンドと"明日"ではなく"今日"を生きようという歌詞が混ざり合い心震わせる、今注目のポップスバンド。

  • Furui Riho

    Furui Riho

    Furui Riho(フルイリホ)
    自身のルーツであるゴスペルから生まれた、ソウルフルな力強さそして透明感のある歌声を武器に、
    自身で作詞・作曲・編曲に携わる表現者。

    グルービーなサウンドだけではなく、心に訴えかけるそのリリックは彼女の人生そのものである。

    2019年に発表した配信Single「Floating feat. K-over」は2020年開催の北海道を舞台にしたコンベンション”No Maps”テーマソングに起用。2020年7月にリリースした「I’m free」はラジオ局パワープレイや各所サブスクリプションサービスで多数のプレイリストにリスインするとたちまちリスナーは拡大しリリースから間も無く10万回を突破。
    同年12月には名だたるアーティストのプロデュースを手がける若きトラックメイカー”maeshima soshi”が参加したRemixをリリース。

    拠点を地元北海道に置きFM-NORTHWAVEでは初のレギュラーラジオ「ななめに、ラブい。」がスタートと
    2020年は飛躍の年となった。
    2021年にはフジテレビ「TUNE」では2021年NEXT BREAK ARTISTとして紹介、更に全曲ラジオ局5局が加盟するJFLがセレクトする”MUSIC FOR THE NEXT”に選出されるなど人気爆発寸前の大注目シンガー。

  • Set Free

    Set Free

    大分出身・京都在住のメンバーを中心に結成。
    2018年、現在の体制で活動開始。
    渋谷系・00年代に影響を受けつつもエバーグリーンなサウンドと独自の歌詞の楽曲を武器に、 2019年のTOKYO BIG UP!!・ROJACK等オーディションで入賞を果たし、2020年に初の流通盤をリリースする等精力的に活動

    HP:https://artist.aremond.net/setfreeband/

  • いつかのネモフィラ

    いつかのネモフィラ

    2018年3月始動
    前海のソウルフルかつ繊細な歌声に
    色付けをするようなアコースティックギターを奏でる後藤
    そして豪快かつ寄り添うようなエレキギターの有末のプレイにより絶妙なバランスで成り立ついつかのネモフィラの音楽は要注目です。
    https://itukanonemophila.wixsite.com/itukanonemophila

ENTRY【デモ音源受付】

応募フォームに必要事項、YouTube や vevo などの WEB サービスに音源、動画、歌詞等をアップロードした URL を入力ください。
※宅ふぁいる、データー便などのダウンロード型ストレージ・サービスはご利用になれませんのでご注意下さい。
※デモテープ採用の有無や個人的感想等の問い合わせは一切受けかねますので、ご了承ください。該当されたアーティストには3ヶ月以内に連絡させていただきます。

ご不明な点はこちらまでお問い合わせください。

個人情報およびプロフィール情報の取り扱いについて

当社の個人情報保護方針に従って個人情報の適正な収集・利用・管理などに取り組んでおります。
上記目的を達成した個人情報は当社が責任を持ってすみやかに廃棄させていただきます。当社の個人情報保護方針などの詳細情報につきましては、当社「プライバシーポリシー」にてご確認ください。