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REVIEW

衒いや装飾の無い花束のような、だからこそ我々受け取り手へ誠実に響く楽曲だ。昨年12月に届けられたクリスマス・プレゼント「お休みハッピーX’mas」を除けば、約1年2ヶ月振りとなる新曲「誰より愛を込めて」は、多幸感と祝祭感に満ち満ちたヴァイオリンのリフで幕を開ける。“これが長澤知之なのか?”と、一瞬驚く人もいるかも知れない。しかし、最後まで聴けば確信してもらえるはずだ。“これも長澤知之なのだ”と。

昨年のミニアルバム『SEVEN』で、“人と音楽を作り上げること”“自分以外の色が介入すること”の楽しさ、喜びに目覚めた意識は、本曲にも引き継がれている。今回、長澤をサポートするのは来年で結成10周年を迎える4人組インストゥルメンタル・バンド、Nabowa。関係性、アンサンブルともに築き上げられた集団の中に、長澤が飛び込む初の形と相成った。だが、両者の親和性たるや盤石の形で鳴り響いている。一昨年、シンガーをゲストに招き入れ、非インストゥルメンタル・アルバム『DUO』を作り上げたNabowaの技量も然ることながら、やはり長澤の心境変化が大きいだろう。山本啓(vl)が奏でる澄み切ったヴァイオリンの旋律は全編で雄々しく流れ、景山奏(g)にギターソロを委ねる場面も。なにより単純に、Aメロとサビのみで構成されたシンプルな楽曲が約6分半にも渡るのは、長澤とNabowaによるセッションをアウトロで大々的にフィーチャーしているからに他ならない。そこからは彼らの笑顔が透けて見えてくる。また、唯一無二の歌声とギターを半ば自虐気味に描く詞世界は「俺のアレ」(『P.S.S.O.S.』収録)に通じるところもあるのだが、そのべクトルは真っ向逆だ。「俺のアレ」が声とギターを以て、自身を理解してくれない人へ“ぶつける”あるいは“突き刺す”ものだったとすれば、この曲は長澤を愛してくれる者に対し、ただただ“奏で”“歌う”。そう、誰より愛を込めて。

長々と書いてしまったが、アルバムレコーディング中の長澤から届いた第1弾先行楽曲が、こんなにも幸せな1曲であるということが、いちファンとして嬉しくて溜まらない。年明け以降、ベースにチェロ、セミアコースティック・ギターから鍋ぶたまで、様々な楽器で遊ぶ長澤の姿がFacebookにアップされているが、そのトライアルからどんな音楽が生まれているのだろうか(本人は触っていないもののマンドリンの写真も確認できる)? 少なくとも既にライブで披露されている「Goodbye Hello」や「無条件幸福」、そしてこの「誰より愛を込めて」を聴いた方々は、期待以外の感情を抱けないはずだ。

戸川 健太(Player)

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『誰より愛を込めて』ジャケット

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