『ハイヌミカゼ』セルフ・ライナー・ノーツ

1. サンゴ十五夜
この曲は、私が奄美で見ていた”十五夜の満月が海を照らす時、水平線に見える船がなぜか切なく感じたこと”を思い出して唄っています。遠く離れてしまった魂を愛しく思う気持ちを奄美語で「愛(かな)しゃる」と表しています。”ふくらんだ感情は、その魂たちに逢いたいと強く思っていく”、それを繰り返し唄う奄美の「拝(うが)みぃぶしゃた」という言葉が伝えています。

2. ワダツミの木
この曲に出逢った時、初めて「海神(ワダツミ)」という言葉を知ることができ、今までよりさらに海を大切に思いながら唄いました。そんな想いを含め沢山の人にこの曲が届いてくれて、本当にすごくうれしく思います。

3. 夏の宴
奄美では毎年夏に「八月踊り」と言って、輪になって太鼓と唄で踊るという行事があります。その日は、”亡くなった人の魂も一緒に”と、皆で踊ります。そんな「八月踊り」の日のことを思い出して唄っています。

4. ひかる・かいがら
最初にこの曲を聞いた時、「やはり山崎節だ!」と感じました。ですが、詞を頂いてから何度も唄う事で優しく自分の中に入ってきて、それが山さんの奏でる楽器と良い感じにまざりあう事ができ、私が感じている優しさをいっぱい出せたと思います。ドラムを叩く山さんは「俺はリンゴ・スター!」と言って叩いていました。

5. 心神雷火
「私の中の野生」=この言葉に私は一番ドキッとしました。こんな言葉に見落としてしまう当たり前な事を感じさせられるなぁ~と。私は自分の事を野性的だと少し思ったりもして、風の中を走る自分を想像したりしながら唄いました。パーカッションの藤井珠緒さんは、私がサルになって走り回っているイメージで演奏したそうです。

6. 37.6
小さい頃、熱が出て不安になっている時お母さんが優しくなるのがうれしくて、うんと甘えてた自分を思い出します。一人の生活になって寝込んだ時、「こんな時に家族がそばにいてくれたら」なんて最近感じたりもしました。この歌録りの時、見事に私は37度6分の熱があったのでした・・・

7. 初恋
初めて恋の歌を唄ったので「初恋」?なんです。聞きやすい音の中に切なさがたっぷりあるなぁ、と思い唄ってみたくなった曲です。

8. ハイヌミカゼ
「夏の宴」では「八月踊り」という風景を唄っていますが、この曲は「八月踊り」の時に一緒にいる魂たちへの思いがすごく強く伝えられていると思います。「一緒にこの南の風の中で」という気持ちを感じたので「ハイヌミカゼ=南の御風」というタイトルにしました。馬頭琴の音が風を運んでくれるのではないでしょうか。

9. 君ヲ想フ
18歳で奄美を出る時、空港で見送る友達や両親と離れる淋しさや都会で一人で生きるという不安で泣き崩れました。でも、そんな不安を抱えてやってきた都会で出逢った人達に”ふるさとを想うという気持ちをもらった”と、最近強く感じていました。そんな気持ちを詞にして、そして奄美の空港への道を知っているハシケンさんに曲を書いてもらいたいと思いお願いしました。この曲を聞いて「何か大切な君ヲ」想ってほしいと思います。

10. 凛とする
初めて曲を聞いた時「寒い国の音がする」と思い、私が初めて雪を見た時のことを思いました。大はしゃぎで雪に抱きついたりした事など。そして、海を渡りエリックさんと出逢い、この曲が完成した時ほんとうにうれしかったです。とても良い経験をしたなと思います。そして、またエリックさんと一緒に何かできたらと思っています。この曲から”雪の美しさ”、”その雪をうけとめる大地の偉大さ”を感じてほしいです。

(関東版「weeklyぴあ」2002年6月17号より転載)

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